祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
慌てるイノリの姿に笑うカンナとケン。




「素直になるのが遅いのよ、イノリは。全く…」

「結局あの2人は両思いだったんだな。何となくわかってたけど」

「ケンはキヨの事諦めるの?」




カンナがケンを見ると、ケンは目にいっぱい涙を溜めていた。




「いいや!諦めてなんかやんない!!まだキヨにフラれたわけじゃないしねっ!!」

「あはは!ケン、ありがとう。元気貰ったよ。…私もカゼの事、諦めたりしないわ」



カンナとケンは潤んだ瞳を細めて笑った。





イノリが家を出ると、家の前に停めてあるケンの車の中でキヨとカゼが寄り添って眠っていた。


イノリが窓を叩くと、眠たそうにカゼが起きる。




「………イノリ?どうしたの?」

「どうしたのじゃねぇ!!キヨに触んな!」

「………やっと素直になったな。それでいい。これ以上キヨを傷つけるなら本当に俺が貰うとこだった」




カゼは車から降りると、あくびをしながら自分の家へと帰っていった。



車の中ではキヨが規則正しい寝息を立てながら眠っている。



イノリはキヨの頭を優しく撫でると、そっとキスをした。


長年の想いを全てさらけ出すように、優しく長いキス。




「…ごめんな、キヨ。俺はお前とは付き合えない。お前だけは駄目だ。そんな事出来ないんだよ…」




イノリは悲しそうな顔でキヨを見つめていた。


視界が滲んでいっても視線を離す事はなかった。
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