祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
誰かの嗚咽の声に気付いたキヨが目を覚ますと、顔を伏せながら泣きじゃくるイノリの姿が見えた。




「…イノリ?どうしたの?」



キヨがイノリの腕を掴むと、イノリはキヨを抱きしめた。



キヨは泣き顔が見られたくないんだなと暗黙の了解をし、イノリの背中に腕を回して抱きしめ返した。




「イノリ、何かあったの?どうした?」

「…っ…お前が好きだ。ずっと好きだった」




イノリの意外な告白に驚くキヨ。


しかし次第に込み上げてきた嬉しさと同時に、涙も溢れてきた。




「…イノリっ…本当に?……私も…ずっとずっとイノリの事が…」

「…それ以上言わないでくれ」

「え?なんで…」



キヨの告白を途中で遮るイノリ。

イノリは震えている。





「…俺はお前とは付き合えない。俺は…お前に何もしてやれない。だから…忘れろ。俺なんてやめとけ」


「よくわからないよ。なんで?好きだって言ってくれたのに!?」


「…最初で最後だ」




イノリはそれだけ言うと車から降り、家へと入っていった。





あぁ…
俺は最低だな。

自分だけ言いたい事言って、キヨの言葉は聞かない。


キヨが苦しむってわかってて

それでも言わずにはいれなかった。




エゴの塊の汚い俺を嫌っていいから…恨んでもいいから

お前は他の男と幸せになれ…





イノリは止まらない涙を拭いながら部屋にいるケンとカンナを部屋から追い出すと、ベッドに倒れ込んだ。
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