祈りのいらない世界で〜幼なじみの5人〜【実話】
8・歩けない
煙草を吸えないキヨは、イノリが吸っていた銘柄の煙草を買うと部屋に焚くようになった。
イノリの匂いがすれば寂しさが半減されると思ったから…。
でも、イノリがいなくなってからの日々は、心にポッカリ穴が空いたみたいに虚しかった。
キヨはイノリが家を出てから、大学にもバイトにも行かず部屋に閉じこもっていた。
「キヨ、大丈夫?メシもろくに食ってないけど」
心配したケンがキヨの部屋の前で声をかける。
しかし返事がない。
「…キヨ、昨日大学でイノリに会ったよ。キヨがいない事を心配してたよ?イノリも寂しいんだと思う」
「…寂しいなら…何で出て行ったの?」
キヨのか細い声が聞こえたケンは部屋の中に入った。
何日かぶりに見るキヨは泣き腫らしたのがよくわかるほど、目が赤く腫れていて顔もやつれていた。
瞳にも色がない。
部屋に広がるのはイノリの匂い。
キヨは一点を見つめたまま、ずっと首を押さえている。
「キヨ?首、痛いの?」
ケンは首を押さえているキヨの手を握る。
ゆっくり手を払いのけると、キヨの首には特に異変はなかった。
「…?どうした?」
「…イノリがそばにいた印があったの。消えないように…庇ってたんだけど……消えちゃったぁ…」
キヨは腫れた目に再び痛々しく涙を浮かべた。
「…っ!!キヨ。会いに行こう?イノリの所に行こ。このままじゃキヨがキヨじゃなくなっちゃうよ」
ケンがキヨの腕を掴むと、キヨは力無く首を横に振った。
イノリの匂いがすれば寂しさが半減されると思ったから…。
でも、イノリがいなくなってからの日々は、心にポッカリ穴が空いたみたいに虚しかった。
キヨはイノリが家を出てから、大学にもバイトにも行かず部屋に閉じこもっていた。
「キヨ、大丈夫?メシもろくに食ってないけど」
心配したケンがキヨの部屋の前で声をかける。
しかし返事がない。
「…キヨ、昨日大学でイノリに会ったよ。キヨがいない事を心配してたよ?イノリも寂しいんだと思う」
「…寂しいなら…何で出て行ったの?」
キヨのか細い声が聞こえたケンは部屋の中に入った。
何日かぶりに見るキヨは泣き腫らしたのがよくわかるほど、目が赤く腫れていて顔もやつれていた。
瞳にも色がない。
部屋に広がるのはイノリの匂い。
キヨは一点を見つめたまま、ずっと首を押さえている。
「キヨ?首、痛いの?」
ケンは首を押さえているキヨの手を握る。
ゆっくり手を払いのけると、キヨの首には特に異変はなかった。
「…?どうした?」
「…イノリがそばにいた印があったの。消えないように…庇ってたんだけど……消えちゃったぁ…」
キヨは腫れた目に再び痛々しく涙を浮かべた。
「…っ!!キヨ。会いに行こう?イノリの所に行こ。このままじゃキヨがキヨじゃなくなっちゃうよ」
ケンがキヨの腕を掴むと、キヨは力無く首を横に振った。