私の初恋は屋上で


『そんな‥‥‥。あんまりよ、こんなのっ!』

わぁぁぁ〜‥‥‥‥
と、声をあげて泣きじゃくる。

なんなの。

これじゃあ私が悪いみたいじゃない。


なんなのよ。




それから10日後、私は退院し、家に帰った。


もちろん私は覚えていなくて、初めて見る家だった。


家に入り、あちこちを見て回る。
でも、やっぱり思い出せない。

『あぁぁ、もう!!なんなのよ!!』

バンッ
とドアを叩く。

『乃愛。』
後ろからお兄ちゃんの声が掛かる。
私はいきなり涙が溢れでて、自分の気持ちをお兄ちゃんにぶつけた。


『ねぇ、もうなんなの!?意味分かんない!こんな家知らないし、なんか私の部屋あるし!携帯にも知らない名前ばっかで思い出せない!!あの女の人だって!初めて会ったのになんか親しげにしてくる!いらいらするの!!ねぇ、お兄ちゃん!あの人どっかやって!私の前からどけて!あの人見てると頭が痛くなるの!』


涙声になり、もう自分が何を言っているのかすら分からない。


『なんか思い出せそうで‥‥‥だけどあの人みたらそれが一気に吹っ飛ぶ!!あの人は私を邪魔してるの!頑張って思い出そうとしてる。でもっ!っっ!!』


『乃愛?』



私はいけないっ
と思った。だけど、もう遅かった。


『ごめんね、乃愛ちゃん。‥‥‥私、邪魔だよね‥‥‥今すぐどっか行くから‥‥本当にごめ‥‥‥っ‥‥‥。』


目からたくさんの涙を出す。
下唇を咬み、手を震わせている。


『あ‥‥‥あの‥‥‥えっと‥‥。』
『楽しかった。乃愛ちゃん、ありがとう。』



それだけを言うと荷物をまとめ、何も言わないまま走り去ってどこかに行ってしまった。
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