優しい部屋
それでも、夜になれば帰る先は我が家。
そして、朝になれば、ユカリの作った飯を食って職場に向かう。
結局俺の居場所なんざ、どこにもねぇんだよな……
「……サン、ねー、ちゃんと聞いてくれてます?」
やべっ。仕事中だってのっ!
「あ~ごめんっ。ちょっと考え事してて。
で? その資料がどうした?」
目の前には膨れっ面もカワイイと思える新入社員が立っている。
「課長に提出する前に、ちょっと見ていただきたくって。以前、小泉サンが作られてたの見ながら作ってみたんですけど」
少し震える手から書類を受け取り、目を通す。
「いいんじゃないか。あーでもココもう少しこんな感じで……」
鉛筆を走らせる。
じっと俺を見つめる目がカワイイ。
あぁ、ユカリも昔はこんな風に俺を見つめてくれてたんじゃなかったか……