LittlE bY LittlE
「あ、煙草忘れた。」
家に着くなり翔は言った。
「……それコンビニ行った一番の目的じゃん。」
「うーん、仕方ないな。もう一回行こうかな。」
「えー、俺もう行きたくない。」
「そう?じゃあ俺行ってくるから、留守番頼める?」
「……それも楽しくない。」
「我が儘だなぁ。どっち?」
季節は冬で吐く息が白い中、出掛けるのは正直面倒。
でも一人でいるのは、退屈だ。
「………行く。」
「そ。じゃあ肉まん買おうか。」
「そうこなくちゃ!翔、早く行こ!」
口に広がる肉まんの味を想像すれば、寒さなんて感じない。
「本当食い意地張ってるなぁ。」
「別に良いだろ、好きなんだから。」
「悪いとは言ってないよ。ま、俺はピザまん派かな。」
「あー!それも捨てがたい!」
コンビニまでの道でじっくり考えよう。
肉まんが良いかピザまんが良いか。
一度入った家のドアを出て、数分前に歩いた道をまた歩いた。
「そう言えばさ」
「何?」
「何で助けたの?」
問いに翔は、首をかしげた。
「何が?」
「さっきの女だよ。翔なら放置すると思ったから。 」
「ああ、それか。んー…簡単に言うと気紛れなんだけど、理由をつけるとしたら……」
翔は少し考えて、俺の方を見た。
「何だよ?」
「似ていたからかな。」
「似てるって誰に?」
「出会った頃の瑞季に。」
似てる?俺と?あの可愛げゼロの女が?
「全然似てねぇよ!」
「うん、まぁ、そうなんだけど。……目がね。」
「目?」
「そ、目。助けてほしいって訴えかけてくる目が似ていたんだ。」