スイートホーム
お昼を食べ過ぎたからじゃない。


このあまりにも甘く、痺れるような感覚は、過去にも何度か経験があり、どういう理由によるものかは分かり過ぎるくらい分かっている。


ただ、その衝撃の大きさ、強さは過去の比ではないけれど。


私はゆっくりと、顔をドア側へと戻した。


頭上に、微かに小太刀さんの呼吸音と風が感じられる。


だけど、先ほどの男性に抱いたような嫌悪感は微塵も沸き起こってはこなかった。


それどころか……。


あまりにも心地よくて、だけど何だか切なくて、今にも涙が溢れそうになる。


ホント、私はなんて鈍いのだろう。


ここに来てやっと、自覚するなんて。


自分自身の気持ちに。


今までにも、ヒントはたくさん出ていたのに。


麻美と加奈が何を言いたかったのか、今なら手に取るように良く分かる。


間違いない。


私はこの人に、恋をしている。


いつも私に負担をかけないやり方で、さりげなくスマートに窮地を救ってくれた。


一見ぶっきらぼうだけれどそれを補って余りある、優しさと慈悲深さを併せ持つ、まさしく『正義漢』という言葉が相応しい、小太刀龍之介さんに


私は、恋をしているんだ。
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