スイートホーム
悔やんでも悔やみきれない。


息を切らし、エントランス前までたどり着いた所で、『このままの勢いで突入したら文子さん達に不審がられる』とハタと気が付いた。


呼吸を整え、何事もなかったかのようにゆっくりと管理人室前を横切り、暗証番号を入力して自動ドアを抜けてから、足早に自室へと向かった。


玄関に入り急いでドアを閉めた瞬間、緊張が解け、その場にしゃがみこむ。


今までだって充分気まずかったのに、あんなヘンテコリンな告白をしてしまって、ますます顔を合わせ辛くなっちゃった。


これから私、一体どう小太刀さんと接して行けば良いの?


膝を抱えて顔を埋め、その姿勢のままグルグルと考えを巡らせた。


「彩希ちゃ~ん?」


どれくらいそうしていただろうか。


ふいに、ドア越しに文子さんの声がして、弾かれたように顔を上げつつ返答する。


「は、はいっ?」


「もう休憩時間終わったわよ~。引き続き入力作業お願いできる?」


「あ、は、はい!」


いけない。


私は慌てて立ち上がり、ドアを開けた。


今日は遅番で、この後もまだまだ仕事がてんこ盛りだった。


事務作業だけでなく、もうしばらくしたら夕飯作りにも取りかからなくてはならない。


午後の休憩時間、自室でお茶をした所ゴミが出て、ちょうどキリが良かったので集積場へと持って行ってしまったのである。
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