スイートホーム
その後身だしなみチェックをしてから仕事に戻ろうと思っていたんだけど…。


グズグズしている間に、いつの間にやら時間が過ぎてしまっていたらしい。


「あ、ごめんね?急かしちゃって」


私の姿が見えるやいなや、文子さんは済まなそうに言葉を発した。


「時計見たら4時過ぎてたからさ。彩希ちゃんが時間に遅れるなんて珍しいな~と思いつつ、呼びに来ちゃった」


「いえ、とんでもないです。声をかけていただいて助かりました」


このまま堂々とサボり続ける所だった。


「ダメですね、何だかボ~っとしちゃってて」


「あら、いつも早め早めに仕事をこなしてるんだから、たまにオーバーしちゃうくらい大丈夫よ」


笑顔でそう返答しつつ、文子さんは体の向きを変えた。


「じゃ、私先に戻ってるから。よろしくね」


「はい」


文子さんが歩き出してからドアを締め、急いで洗面所に向かうと、マウスウォッシュで口内を洗浄しつつ髪の毛を整え直した。


その後すぐに部屋を後にし、小走りに管理人室に向かう。


「すみませんでした。遅れてしまって」


「ううん。大丈夫よ~」


「守家さんでもうっかりする事があるんだなぁ」


謝罪しながら室内に入る私を、温かく出迎えてくれる文子さんと旦那さん。


感謝の念を抱きつつ、PC前に腰掛け、さっそく作業の続きに取りかかった。
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