スイートホーム
自分が私の貴重な昼休憩に割り込み、邪魔をしている存在であるという事は完全に意識の外にあるらしい。


やっぱり志希は志希だったな、と内心苦笑しつつも、私は素直に箸を手に取り、「いただきます」と唱えたあと食事を始めた。


「でも…。何だか不思議な感じ」


お味噌汁をすすってからポツリと呟く。


「何が?」


「まさかあんたとこんな話をする日が来るだなんて、夢にも思っていなかったから」


「はぁ?何でだよ?俺達は残念な親を持った被害者同士だろ?」


志希は胡座をかいていた足を前方に伸ばしながら言葉を繋いだ。


「もっと早くこういうディスカッションの場を設けて、お互いに本音をぶつけ合うべきだったよな。でも、当の両親が同居している家の中では中々そういう機会は…」


「ん?両親?」


聞き間違い、もしくは志希の言い間違いかと思いつつ確認した。


「それって、お父さんもその枠組みの中に入ってるってこと?」


「当然」


「えっ?でも、お父さんの方は別に…」


「ああ。親父は常識人だし穏やかだし、単体で見れば文句なく「良い人」の部類だと思うよ。でも、自分の妻をきちんと制御しきれずに、子供達に負担をかけてる時点でダメダメな父親だよな」


「そんな…。お父さんは一生懸命頑張ってくれてるじゃない」


お母さんの数々の暴言からいつも庇ってもらっていたし、色々と励ましてもらって来た。
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