スイートホーム
「姉ちゃんに対して、まるっきり愛情がなかったって訳ではないんだよ。なんせ、『希望に彩られた人生を送れますように』っていう願いを込めたらしいから」
「は?」
いきなり何を言い出すのやら…。
「姉ちゃんの名前の由来。お腹の中の子が女の子だと分かった時から、姓名判断の本とか辞典とか読みあさって、一生懸命考えたんだってさ」
「……お母さんと、そんな話してたんだ…」
「まぁな。で、俺は希望が叶うよう高い志を持って生きる男になるように『志希』。もっともらしい理由をつけてるけど、要するに姉ちゃんとの語呂合わせだよな。だから命名の段階では姉ちゃんの方が断然愛情を注がれてたってワケで…」
「なんだ。やっぱり何だかんだ言って、あんたはお母さんと普通の親子やってたんじゃない」
思わず拗ねた声音で志希の言葉を遮ってしまった。
だって、どんなに記憶を遡ってみても、私はそんな仲良し親子の定番でお約束のほのぼのとした会話をお母さんと交わした事なんかない。
「いや、だから、言っただろ?上手いことお袋に合わせてただけだって。こっちが『普通の息子』を演じてやれば、あっちも『普通の母親』になってくれて、色々と楽だったからさ」
志希にしては珍しく、ちょっと焦ったように早口でそう弁解した。
「だけどいざ子育てを始めてみたら、自分の思い通りにならない事ばかりですぐに挫折を味わったんだろうな」
「は?」
いきなり何を言い出すのやら…。
「姉ちゃんの名前の由来。お腹の中の子が女の子だと分かった時から、姓名判断の本とか辞典とか読みあさって、一生懸命考えたんだってさ」
「……お母さんと、そんな話してたんだ…」
「まぁな。で、俺は希望が叶うよう高い志を持って生きる男になるように『志希』。もっともらしい理由をつけてるけど、要するに姉ちゃんとの語呂合わせだよな。だから命名の段階では姉ちゃんの方が断然愛情を注がれてたってワケで…」
「なんだ。やっぱり何だかんだ言って、あんたはお母さんと普通の親子やってたんじゃない」
思わず拗ねた声音で志希の言葉を遮ってしまった。
だって、どんなに記憶を遡ってみても、私はそんな仲良し親子の定番でお約束のほのぼのとした会話をお母さんと交わした事なんかない。
「いや、だから、言っただろ?上手いことお袋に合わせてただけだって。こっちが『普通の息子』を演じてやれば、あっちも『普通の母親』になってくれて、色々と楽だったからさ」
志希にしては珍しく、ちょっと焦ったように早口でそう弁解した。
「だけどいざ子育てを始めてみたら、自分の思い通りにならない事ばかりですぐに挫折を味わったんだろうな」