スイートホーム
「その点に関しては確かに同情するけど…」


自分とは異なる人格を持った、一人の人間を育てていかなくちゃいけないんだから、波長が合わない事も当然あるだろうし、そのストレス、プレッシャーは半端ないだろう。


ちょっとでも何か失敗したりしたらすごく落ち込んじゃうだろうし、イライラも募るだろうし、その後きちんと心の軌道修正ができるかどうか、私も正直自信がない。


何だかんだ言って私と志希をここまで大きくする事ができたんだから、お母さんはお母さんなりに並々ならぬ努力はしてくれていたのであろう。


その方向性をちょっと間違えてしまったというだけで…。


「それでもまぁどうにかこうにか子育てしていく訳だけど、可愛らしく、華やかに成長して欲しかった娘はそういった方面にはとんと興味がなくて、地味で裏方を好む、ひっそりこっそりした性格になっちまって、要領の悪さから色んな面で損ばかりしていて、見ててハラハライライラしちまうって言ってたんだよ」


「……悪かったわね」


思わずムッとしながら返答してしまった。


だって、そういうこと、普通本人の目の前で堂々と暴露する?


私がお母さんから悪影響を受けたのはもちろんだけど、志希の方も、歪んだ育ち方をしてしまっている事が伺える言動が、ちょいちょい見受けられるんだよね。


これからはお互いに目についた悪い面は指摘しあって、矯正しあっていかないと。
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