スイートホーム
「まぁ、とにかくもうあんな母親の事は放っておいて、俺達は俺達の人生をしっかり歩んで行こうぜって話」


「そうね」


その意見には完全同意だ。


私は力強く頷いたあと、手にしていた箸を改めて持ち直し、食事を再開した。


「……俺も、いい加減腹へって来たな」


私の食する唐揚げ定食をぼんやり眺めつつ、志希はポツリと呟く。


「あ。そういえばあんた、当然お昼はまだよね?」


付け合わせのトマトを箸で掴み、口に運びながら問い掛けた。


「うん。姉ちゃんとの仲直りが無事済んだあと、梨華さんとどこかでランチでもする予定だったからさ」


「え…。そ、そうなんだ」


思わずどもって返答している間に、志希は『はぁ~』、と深く長いため息を吐いた。


「あー。ホントへこむわー。あんな女の為に一肌脱いで、あわよくばそれをきっかけに彼氏に昇格できたりするかな?なんて下心を持ってただなんてさ」


「えっ。う、うそ」


「うそじゃねーよ。梨華さん今フリーだって言ってたし、俺もここ3ヶ月くらい彼女いねーしさ。『あれ?もしかしてこれってチャンスじゃね?』って、思ったんだよな」


「…昔から、梨華の事が好きだったの?」


「いんや?そりゃ、あんだけの美人なんだから存在は気になりまくりだったけど、高嶺の花だと思ってたから付き合うつもりは全然無かったワケ」
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