スイートホーム
外出時はジェルの後に日焼け止めとファンデーションがこれまた一体化されているクリームを塗って素肌を隠し、体裁を整えていた。


でも、そこまででもういっぱいいっぱいで、それ以上の美容技術は持ち合わせていないけど。


アイメイクなんかは、成人式や友達の披露宴などで美容師さんにお任せした時以外、自分ではした事がないし、髪型は何かの作業をする時に一つにまとめられるように肩よりちょっと長い黒髪のストレートというスタイルを学生時代からキープしていて、巻いたり盛ったりというアレンジなんかできないしネイルアートも未経験。


同年代の女性の中ではとんでもない女子力の低さだろう。


……だからかな。


そこでふと思った。


梨華のように、流行のお洒落を取り入れ、可愛らしくある事に努力を惜しまず、キラキラと光り輝く女の子に優さんを取られてしまったのは。


そのまま、心の奥底にぽっかりと口を開けた、深く暗い穴の中に落ち込んで行きそうになったけど、幸いすぐに我に返った。


って、ヤメヤメ!


そんな、今さら考えても仕方のないような事でブルーになるのは。


早く家に帰って、やるべき事を片付けた後はのんびりと過ごす事にしよう。


そう決心し、無意識に止まっていた足を再び前に動かした。
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