スイートホーム
165センチの私から見て、ゆうに20センチ以上は長身で、胸板は厚く肩幅もガッチリしている。


私の証言を一言でも聞き漏らすまいとでも思っているのか、奥二重で切れ長の目から放たれる視線はとても鋭くて…と言うか、ぶっちゃけ睨まれているみたいで、真一文字にひき結んだちょっぴり大きめで厚めの唇も、強面っぷりに拍車をかけている。


「な、なのであの、館内放送してあげていただけますか?」


「そうですか。承知いたしました」


それでも何とか頑張って話を続けた私に警備員さんは頷きながらそう返答すると、素早く屈み込み、女の子に視線を合わせて言葉を発した。


「大丈夫だよ。すぐにお母さん、見つかるからね」


あ……。


さっきとは違った意味で、再び胸の鼓動がはねあがる。


それほど大きな変化を見せた訳ではないのに。


女の子に向けて目を細め、僅かに口角を上げて、穏やかに語りかける警備員さんの表情は、それまでとは段違いで優しくて頼もしくて、心底安心できた。


「じゃ、行こうか」


彼がそう言いながら立ち上がり、女の子の手を取って歩き出そうとしたその時。


「あ!ルナ~!」


通路の奥の方から甲高い声が響き渡った。


「もう、何やってるのー!」


そちらに視線を向けると、右手に提げたビニール袋をガサガサいわせながら走り寄って来る女性の姿が。
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