スイートホーム
地下にある食料品売り場で仕入れたお惣菜かな、なんて呑気な事を考えてしまった。


「ままぁ~!」


すでに予想はついていたけれど、案の定女の子のお母さんだったようだ。


泣きながら、自らも母親に駆け寄って行き、その勢いのままヒシッと抱き付く。


「勝手にいなくなったらダメって言ったでしょー?」


「いなく、なって、ないもんっ」


女の子はしゃくりあげながら必死に弁解した。


「お洋服見てたママがどっか行っちゃって、あわててさがして、あ、いた、と思ったら、あのおねえちゃんだったんだもん」


お母さんに抱き付いたまま、ルナちゃんは右手を上げ、後方に居る私を指差した。


「あ…」


「ま、まぁ…」


お互い、ちょっと気まずく見つめ合う。


確かに、パッと見勘違いしてしまうくらい、私達は全体的に似通っていた。


身長はだいたい同じくらいで、白の七分そでのブラウスと黒のクロップドパンツ、黒いローヒールのパンプスというコーディネート。


良く見ればデザインや形はそれぞれ違うんだけど、お母さんとはぐれてテンパっている迷子には、とっさに細かい所まで観察しているような余裕はないだろう。
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