スイートホーム
さらに髪型も、お互い黒髪のセミロング。


お母さんはワンレン、私は前髪ありで横に流しているけど、これまた後ろから見たらその違いなんか分からない。


推測だけど、このお母さんは仕事をしていて、帰りにルナちゃんを迎えに行き、ここに寄り道したのだろう。


流行り廃りのない、無難な通勤スタイルだから、仕事帰りの人が大勢行き交う駅直結のデパート内で同じ服装の人に遭遇したとしても何ら不思議な事はない。


ないんだけども。


…なにやらちょっと気恥ずかしい。


「なんか、すみませんでした」


「え?あ、いえ。こちらこそご迷惑おかけして…」


私とお母さん、お互いにはにかみながら言葉を交わした。


「あ、警備員さんも。お手数おかけして申し訳ないです」


お母さんはハタと気付いたようにそう言うと、彼が「いえ…」と返答している間にルナちゃんをやんわり自分から引き剥がし、私達の方に振り向かせた。


「ほら、ルナもお兄さんとお姉さんに『ごめんなさい』して?」


「ごめんな、しゃい…」


「う、ううん。大丈夫だよー」


ひっくひっくしながら私達を見上げて謝罪するルナちゃんはとんでもなく可愛らしく、思わずキュンキュンしながら答えてしまった。
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