スイートホーム
ただ、声帯が縮こまってしまってうまく発声できず、ちょっとかすれた弱々しい声になってしまったけど。


『ごめんね?私達のせいで、職場に居づらくなっちゃったんだよね?』


しかし私以上に弱々しい、震える声音で梨華は続けた。


『せっかくやりがいのある仕事に就けたのに…。それで優さんにね、彩希のご家族に、二人できちんと謝罪しに行った方が良いんじゃないかって話をしたの』


「え!?」


『正式にはしてなくても婚約寸前の仲だった訳だし。ここは大人のけじめとして…』


「ちょ、やめてよ!」


怒りと焦りがミックスされた感情に後押しされ、私は声を上げた。


「優さんが心変わりした事までは話したけど、梨華の名前は出してないんだから」


『え…。そうなの?』


「親友に恋人を取られたなんて、恥ずかしくて言える訳ないでしょっ」


意外そうに聞き返して来る梨華に、すかさずあてこすり。


「ちょっとは揉めたけど、家ではその話はもう終わった事になってるの。今さら蒸し返さないで」


これ以上私に惨めな思いをさせないで。


「そういう事だから。余計な気遣いは無用。それとね」


相手に言葉を挟む隙を与えないように、私は矢継ぎ早に捲し立てた。


「私、もう梨華と話すような事は何もないから。悪いけど、今後一切電話はかけてこないで。それじゃ」


言いながら、素早く通話を終わらせる。
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