小悪魔女×芸能人

はぁ、と白い息を吐く。
振り向くと、彼。

「…なんで、逃げるの…」

彼も白い息を吐いていた。
ゆっくりと、サングラスをとる。


「だって、翔太さんが芸能人だって…あたし、知らなくて」

あたしは視線を泳がせた。
掴まれている腕が、熱い。

「もし、女を泊まらせたなんてことがばれたら、翔太さん…」

強く、引き寄せられる。

「翔太、じゃなくて、さつきって呼んで」

力強く、体を締め付けられた。
お互いからだが冷えていて、ふれてみるとつめたかった。


「さつき」

それが彼の本名。
あたしは愛をこめて、その名前を呼んだ。

「つやこちゃん、俺ずっと、探していたんだ」

痛いくらい抱きしめられる。
このひとは、一人ぼっちが嫌いな人。あたしは知ってる。

「俺の前から、居なくならないで」

苦しい。息がしにくい。

だけど、そんな窮屈感さえ幸せで。


「つやこちゃんを、ほおっておけない」


危なっかしくて、繊細で、息を吹きかければ消えそうな女。

そんな“艶子”を放っておけない、そういう男なんでしょう?


「…さつき」



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