小悪魔女×芸能人
ぱたん。
有無を言わさず、扉を閉められた。
びっくりした。
自分でもびっくりするくらい体が冷えてることにまず1つ。
そして、いつも能天気な彼が、こんなに手際が良いなんて。
あたしはびしょびしょに濡れたワンピースを脱ぎ捨てて、すぐにシャワーを浴びた。
温かい湯が、あたしの凍った体をじんわりと溶かしていく。
感覚の無かった手足に、だんだんといのちが戻ってくる、そんな感じ。あたしはかなり、危険な行為をしたのかもしれない。
シャワーを止める。
いいや、まだ、それは終わっていない。
浴室から出ると、着替えが置いてあった。
彼の、Tシャツ。
着てみると大きくて、温かい。
こんな安っぽい安心感なんて求めていないけど、いざ感じてみると、心地いい。
そっと扉を押し開ける。
あたりを見渡して、どうしようかと戸惑う。
そして、キッチンのほうから現れた彼を見て、柄にも無く間抜けな声を出してしまった。
「驚かせて、ごめんね」
彼はタオルで髪を拭いている。
彼も濡れているのに。
「ごめんなさい」
もし、風邪を引いてしまったらどうしよう。
彼は、人気ものなのに。
「…どうして謝るの?」
彼はにっこり笑う。
「…風邪でも引いてしまったら、…」
声が出ない。
もう、寒くないのに。