小悪魔女×芸能人
「いいよ、僕よりきみのほうが、風邪をひきそうだったしね。じゃあ僕もシャワー浴びてくるね。この家のもの、なんでも使っていいからね」
笑顔のまま、彼は浴室に消える。
寒かっただろうな。顔色も悪かったし、悪い事をしてしまった。
あたしは縮こまって、居間と見られる空間の床に、腰を下ろした。
少しして、彼が戻ってきた。
今度は、ちゃんとした血色だった。
「ねぇ、きみ、なんて名前なの?」
後ろから声がする。
「…つやこ」
「つやこちゃん」
にっこりと笑った。
そして、近くのソファに座る。
あたしは彼を見上げた。
「なんで、あんなところに居たの?こんな時間に、1人で、女の子が」
それは怒っているような口調にも捉えられる。
一瞬、どきりとした。
「…ごめんなさい…」
「なんで、謝るの?」
あたしは視線を泳がせる。
まだ乾いていない髪の毛から、雫が滴って、足に垂れた。その冷たさに、体がびくつく。
「もしかして、なにかされたの?」
彼の目は真剣だった。
真剣で、優しくて、問いただしたりしない目。
優しさそのものだ。