小悪魔女×芸能人

じわりと熱いものが込み上がった。
つい、俯いてしまった。

「言いたくないなら、言わなくてもいいよ。無理に聞かない。…なにか、されたの?」

その優しい声に、頷いた。

熱っぽい視線を彼に向けると、彼は悲しげに眉を寄せた。


「そっか…」

あたしはまた、俯いた。

すると、彼の温かい腕が体に回る。
びっくりして、跳び跳ねてしまった。

「ごめんね、きみを助けたのが、こんな奴で」

彼は笑った。
何て言えば良いんだろう。

「翔太さんは何も悪くないです…。ごめんなさい、こんな真夜中にお邪魔してしまって。あと、着替えも…」

沈黙だった。
とっても気まずい。

「つやこちゃんは彼氏、いるの?」

すぐに彼は、変な意味は無いんだ、と慌てて訂正した。

「彼…暴力を振るう人で」

そう言うと、彼は申し訳なさそうに視線を落とす。

「そんな奴とは、すぐに別れた方がいい。きっとすぐに、いい人が現れるよ」

彼は優しく笑った。
その目が、かなしそうで。

「…翔太さん、は…」
「ん?」

眠そうな目がこちらを見下ろす。


「…なんで、そんなに悲しそうなんですか」


彼は大きな目を更に見開いた。
だけどすぐに、いつも通りに笑う。
あたしは知っている。
あなたのその目には、違う女が映っているんでしょう。


「…なんでだろうね」



そして、あたしはベッドに、彼は居間のソファに寝た。

何度もソファでいいといったのに、彼は頑として譲らなかった。


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