小悪魔女×芸能人
それから、日は過ぎた。
真夜中。
冬の夜は、澄んでいる。
星や月が、自分の出番だとばかりに輝いている。それなのに、控えめで。
あたしはあの道を歩いていた。
コンビニの袋の中には、先ほど買った飲み物が入っている。
あたしのマンションからコンビニは遠い。
今はコンビニの帰りだ。随分歩いているけど、仕方がない。田舎だから。
そして、どきりとした。
遠くの方で、あの声がしたのだ。
「あ、ねぇ!」
その声は、焦っていた。
優しい優しい、彼の声。
あたしはその声とは反対方向に、走り出した。
彼から逃げるように。
「あ、ちょっと!!」
ヒールが邪魔で走りにくい。しまった。こんなので来るんじゃなかった。
だけどあたしは必死で逃げた。
「つやこちゃん!!」
がしりと、腕をつかまれる。
あたりまえだけど、追いつかれてしまった。