恋する美容師
彼女は10分後に来るそうだ。
俺はすぐに店内の掃除をしてから、カットの準備に取りかかった。
今日はもう終わりだと思っていた仕事が一つ増えた。
それだけで俺はスキップしたいくらいテンションが上がる。
そわそわしながら10分間、俺の次のお客様である“青木さん”を待った。
そしてちょうど10分後に、店の自動ドアが開く音が聞こえた。
我慢しきれなくて玄関前のカウンターで待っていた俺は、自動ドアの音と共に顔を上げた。
「いらっしゃいませ、こんにちは………」
そう言った後、俺は数秒間彼女に心を奪われた。
俺の目の前に立っている人は、あまりにも綺麗で、
そしてあまりにも悲しそうだったから。