憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「バカはオマエじゃ。 誰がどう見たってオマエじゃ。 もう、さっさと風呂入って寝ろ。 あ、やっぱ勉強しろ。 早川さん、バカだから」

 見事に一言も二言も多く言い返されるし。

 「即刻寝てやる」

 バカだから、幼稚な反抗しか出来ない。

 「分かったから、さっさと家入れよ。 風邪ひくぞ」

 木崎センパイが、寒そうに両腕を擦った。

 風邪ひきそうなのは、オマエじゃ。 木崎センパイ。

 あ。 ウチにカイロがあったはず。

 「木崎センパイ、ちょっと待ってて下さい!!」

 急いで家に入り、玄関脇の棚を探る。

 あった!! カイロを手に玄関を出ると、

 「いないし!!」

 木崎センパイの姿はなく、駅の方角に目をやると、木崎センパイは既に随分遠くを歩いていた。

 どんだけ足長いねん。 早すぎやろ。

 「~~~~~~~~もー!!」

 短い足をしゃかりきに動かして走った。

 「木崎センパイ!! 待ってて下さいって言ったじゃないですか!!」

 追いつかない為、後ろから大声で呼ぶ。

 「声デカイ!! 黙れ!! 近所迷惑じゃ!!」

 木崎センパイが振り返り、半ギレしながら戻って来た。
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