憎悪と、懺悔と、恋慕。
1階に辿り着き、何気なく郵便受けの方向を見る。
ウチの郵便受けの前に、見覚えのある姿があった。
会いたくて、心配で仕方なかった人の後姿。
「・・・早川さん!??」
「えッ!??」
オレに呼ばれて驚いた早川さんが、不意に持っていた小さな白い袋を郵便受けの中に落としてしまった。
「あー!! 入れちゃった。 木崎センパイに会えるなら手渡せたのに」
郵便受けの細長い穴に無理矢理手を入れて、さっき入れたものを取り戻そうとする早川さん。
オレが見ていない所でやっていたら、不審者として捕まっていただろう行動だ。
「早川さん、何してんの!! 島田さんが『莉子が帰ってこない』って凄く心配してるよ。 早く島田さんと家に連絡入れて!!」
早川さんに近付き、郵便受けから早川さんの手を引き抜く。
「・・・でも、携帯の電池がなくなっちゃてるんで。 帰ったらすぐ電話します」
「オレの貸すから!!」
自分の携帯を早川さんに握らせると、早川さんが困った表情で『うーん』と唸った。
「・・・沙希の電番、覚えてません」
とりあえず『080』とだけ押してみる早川さん。
その先の番号なんか、絶対思い出せないくせに。
こういう早川さんのバカさが面白くて、最近は可愛いなとも思う。