憎悪と、懺悔と、恋慕。
チャイムを鳴らそうとしていたその人に話し掛ける。
「・・・ウチに、何か用ですか??」
「キミのお父さんと話がしたい」
家の前に立っていたその人は、ワタシの大好きな大好きな木崎センパイの、お父さんだった。
ワタシが、今1番会いたくない人間だった。
「・・・お母さん・・・じゃなくてですか??」
木崎センパイのお父さんが話し合うべき相手は、お父さんではなく、お母さんだろうに。
「キミのお母さんとはもう話合ったから。 キミのお父さんに、大事な話があるんだ」
あんなにも泣き崩れていたウチのお母さんとは正反対の、どこか淡々とした様子の木崎センパイのお父さん。
木崎センパイのお父さんは、ウチのお父さんと何の話をしようと言うのだろう。
木崎センパイのお父さんが、赦せない。 憎い。
でも、木崎センパイのお父さんを追い返す理由がなかった。
だって、追い返したところでお父さんとお母さんが元通りになるわけじゃない。
お父さんだって、木崎センパイのお父さんに文句の一つでも言いたいはずだと思った。