憎悪と、懺悔と、恋慕。
「・・・ワタシは、離婚するつもりはありません。 今回の事も、出来れば妻の耳には入れたくない」
どこまでも自分勝手な木崎センパイのお父さん。
この人が、ワタシの大好きな木崎センパイのお父さん。
信じられないというよりは、残念で仕方がない。
「・・・妻との関係は、どうされるのですか??」
お父さんが、別れたお母さんを『妻』と言った。
なんか、嬉しかった。
きっとお父さんは、別れても自分を裏切ったお母さんの事を気にかけているんだ。
「ちゃんと終わらせました。 彼女とはもう会いません」
木崎センパイのお父さんの言葉に、複雑な気持ちになる。
これで良い。
木崎センパイの為にも、木崎センパイのお母さんにとっても。
ただ、ウチのお母さんが一人ぼっちになってしまう。
木崎センパイのお父さんは狡い。
木崎センパイのお父さんだって、ウチのお母さんと同罪なはずなのに、何も失っていない。
-------『ギリギリギリ』
怒りで無意識に歯軋りをしてしまった。
こんなに怒ったのは、初めてかもしれない。