憎悪と、懺悔と、恋慕。
 
 「・・・ワタシは、離婚するつもりはありません。 今回の事も、出来れば妻の耳には入れたくない」

 どこまでも自分勝手な木崎センパイのお父さん。

 この人が、ワタシの大好きな木崎センパイのお父さん。

 信じられないというよりは、残念で仕方がない。

 「・・・妻との関係は、どうされるのですか??」

 お父さんが、別れたお母さんを『妻』と言った。

 なんか、嬉しかった。

 きっとお父さんは、別れても自分を裏切ったお母さんの事を気にかけているんだ。

 「ちゃんと終わらせました。 彼女とはもう会いません」

 木崎センパイのお父さんの言葉に、複雑な気持ちになる。

 これで良い。

 木崎センパイの為にも、木崎センパイのお母さんにとっても。

 ただ、ウチのお母さんが一人ぼっちになってしまう。

 木崎センパイのお父さんは狡い。

 木崎センパイのお父さんだって、ウチのお母さんと同罪なはずなのに、何も失っていない。


 -------『ギリギリギリ』

 怒りで無意識に歯軋りをしてしまった。

 こんなに怒ったのは、初めてかもしれない。
< 184 / 280 >

この作品をシェア

pagetop