憎悪と、懺悔と、恋慕。
木崎センパイのお父さんが、小さな息を吐いて口を開いた。
「・・・ワタシのスーパーでパートをしている奥様方って『旦那の稼ぎが少ない』とか、『本当は正社員で働きたいのに、良い再就職先がなくて仕方なく・・・』みたいな人が多いんだよ。 でも、キミのお母さんは違った。 『旦那の稼ぎで充分暮らせる。 でも、ワタシが空いてる時間に働けば、家族のお昼のお弁当だったり夕食だったりがちょっと豪華に出来るでしょう??』って、楽しそうに働いていたんだよ」
思い出して少し微笑む木崎センパイのお父さん。
でも、ワタシは逆に胸が痛んだ。
お母さんのお弁当、いつも『代わり映えしないな。 いつも通りだな』って、なんの感謝もしないで食べていた。 お母さんがそんな風に思って作っていたなんて、知らなかった。
「本当に楽しそうだった。キミのお母さん。 『ウチには娘と息子がいるんだけど、どっちもワタシに似て頭が悪いの。 でも、性格は旦那に似て優しくて良い子。 見た目と頭さえ良ければ、ウチの子は世界一』って自慢していて・・・」
木崎センパイのお父さんが、目を細めてはその時の事を懐かしんでいた。
ちょいちょい、待て待て!! それ、自慢じゃないやん。 木崎センパイのお父さんに突っ込もうにも、そんな空気じゃないので、ぐっと堪える。