憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 
 早川さん家の食卓は、終始笑いが絶えなかった。

 早川さんが何故か自慢気に『木崎センパイはK大医学部に現役合格したんだよ!!』と話し出すと、『まじか!! おめでとうございます!! ・・・ゴメン、木崎さん。 ウチ、今プリンしかないわ』と莉玖くんがプッチンプリンを冷蔵庫から持ってきてくれて、『イヤー。 めでたいな。 ビールだな。 ビール飲むしかないな。 おめでとう、木崎くん』と早川さんのお父さんは、法的に自分しか飲めない酒を、何故かオレのお祝いと言う名目で飲みだすし。

 楽しすぎた。 腹を抱えて笑った。 こんなに笑ったのは、いつぶりだろう。 

 オカンの足を奪ってしまった日から、ちゃんと笑った記憶がない。

 今だって、オカンに後ろめたい気持ちが無いわけじゃなく、それはしっかりある。

 でも、オレが笑っていると、早川さんが嬉しそうな顔をするから。

 そんな早川さんの優しい表情が、オレのヒリつく心を撫でてくれるんだ。
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