憎悪と、懺悔と、恋慕。
 

 その日から、お母さんがワタシを避け出した。

 話しかけても返事もしない。

 お母さんに一方的に文句を言おうにも、寝室に逃げて鍵をかけたり、お父さんや弟の傍に行って言えない様にしてみたり。

 お母さんは、不倫をやめる気などないのだろう。

 お母さんに、心底ガッカリした。

 どうしたら、お母さんの不倫をやめさせられるのだろう。


 不倫を続行するつもりのお母さんは、ワタシの話には聞く耳を持たないが、それでも毎日ワタシのお弁当を作ってくれる。

 他所の旦那に現を抜かしてようとも、決して家事には手を抜かない母。

 家庭を蔑ろにしないのは、後ろめたさからなのか、お母さんなりの誠意なのか。

 たとえ誠意であろうとも、不倫は許される事じゃない。

 ワタシにバレようとも不倫を終わらせようとしない母は、きっと本当に木崎センパイのお父さんの事が好きなのだろう。


 母が、恋をしてしまった。

 そして今日も、そんな母が作ったお弁当を鞄に入れて学校へ行く。
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