臆病者のシーソーゲーム(仮)
「へ?何かあった?」
突然の私の発言に、小林は間抜けな声を上げた。
堀川や美希だって『えっ?』と言いたげな驚いた顔をしている。
おかしくない。
さっきまで何も用事なんて言って無くて、
『あ~夏休みが終わる』って言っていた人間が、
突然『用事出来た』なんて言いだすのだから。
しかも、
授業が終わって放課後に『ごめん、用事出来ちゃった』とかなら色々と用事も予想できるし、
『そっか』で済まされるけど、
花火が終わって今は夜9時ちょい過ぎ。
周りの人たちが『帰るか~』なんて言っている時間に…
こんな時間から用事出来たなんて、不思議に思ったり心配するのは変じゃない。
「……ごめん。行かなきゃなの。
また今度連絡するから!」
堀川も美希もついでに小林も。
さっきまで楽しい雰囲気だったのに、
ぶち壊すような帰り方になってごめん。
でも、私は行かなきゃ……行きたい。
言い捨てるように踵を返して、
走り出そうとすれば……
「待てよ、つばちょん…」
左腕を小林の大きな手で掴まれて止められる。