臆病者のシーソーゲーム(仮)
と…意識をグラウンドから自分の居る屋上へ戻した時、
『ギィ』という鉄の擦れる音が鳴り響き、
私がここへ出るために使った鉄のドアが開く。
この屋上は、来る人が全くと言っていいほどいなく、
昼休みの今だって勿論、利用しようとする人など全く居ない。
多分皆の中で、この屋上のドアは鍵が閉まっていると思われているだろう。
存在すら知らない人もいると思う。
だから先生もドアの鍵が開いている事に気づかないし、
『屋上の利用は禁止する』なんて事も敢えて言わない。
私は入学して直ぐにこの屋上を散策しに来て、鍵が開きっぱなしの穴場だという事を知った。
多分ここは鍵が閉まっていて、開かない状態だったのだろうが、
過去の先輩がピッキングして開けたのだろう。
私みたいにひっそりとここを利用していたのかもしれない。
まあ、それだけ人気の無いこの空間に入ろうとしている人物がいる。
じっとドアを見つめていれば、
その人がドアの向こう側から姿を現した。
「え……」
フッと出てしまった言葉に、相手にも聞こえたらしくこちらを見る。
「あ……高山さん」
「す…須藤君…」
これが私たちの初めての会話だった。