臆病者のシーソーゲーム(仮)
ドアを閉めた須藤悠は、
少し気まずそうな顔でこちらに歩いてきた。
一応同じクラスだし、名前は知っていたらしい。
「高山さん1人で居るの?」
フェンスを背にコンクリートに座る私の前に立ったままの須藤悠は、
キョロキョロと周りを見回して人を探していた。
「まあ…須藤君は何で…」
何で一人で居るの?と言いたかったが、
何となく、彼の雰囲気から深く聞けなくて途中で言葉を止めた。
口元をギュッと閉じた私に、須藤悠は私が何を言いたいのか察した様で、
「今まで屋上の存在とか忘れ去ってたけど、
3年になった今ちょっと興味湧いてさ…」
とニッコリ笑いながら言った。
嘘……彼は嘘をついている。
そう思ったのは何故だろう。
彼の事を毎日見ていた訳では無い。
話したのも今が初めて。
なのに、何故か私は……彼が言ったその言葉が嘘だと思った。
だって、いつも皆の中心にいる彼だ。
そんな軽い気持ちなら、他の友達と『ちょっと屋上行ってみようぜ』的な感覚で来るじゃないか。
しかし彼は……他のサッカーをしている友達とは別行動で、
1人でこの場所に足を踏み入れた。