新緑の癒し手
「やはり、そうでしたか。ですが、今回は……勿論、わかっています。次は、正々堂々と戦います」
「うん。もう、二度と……今回、ダレスの為に焼き菓子を作るのだから、無理したら作らないわ」
「……善処します」
両者が置かれている立場によって、ダレスはフィーナの手作り焼き菓子を諦めていた。しかしこのようなかたちでフィーナの焼き菓子を食べることができるとは、運命はわからない。
外食を行わないダレスにとって、手作り料理を食べるのは久し振りであった。そのせいか野菜スープは瞬く間のうちに胃袋に納まり、彼の身体を温める。勿論これだけの量では足りないが、フィーナにこれ以上の負担を掛けてはいけないと空になった皿を差し出し満足したと伝え寝台に横になる。
彼の行動に続くかたちでフィーナはそっとダレスの身体に毛布を掛けると、一言「おやすみなさい」と残し、部屋を退室する。その後、フィーナは再び料理に挑戦する、どの料理も味はいいのだが見た目はいまいち。それでもダレスは全ての料理を平らげ、彼女を喜ばすのだった。