新緑の癒し手
セインは其方の方面に突出した能力を持っていたのか、娼館に通う回数が増えるにつれいらぬ知識と技術が増えていった。結果、娼婦を手玉に取り何人もの相手を抱けるまで成長してしまう。
ナーバルはその情熱を神官の修行に注いで欲しいと願うが、息子は父親の期待に全くそぐわない行動を繰り返し、神経を逆撫でさせる。ストレスで胃を痛めるということはないが、何度も頭に血を上らせているので脳味噌の血管が切れるのではないかと其方の心配が強い。
「……間違えたか」
「何を……ですか?」
「お前の職業だ」
「転職ですか?」
軽い口調で「転職」と発するセインにナーバルは睨み付けると失言を注意し、いい加減にするようにと語尾を強める。また、その年齢で父親に尻拭いさせていることが恥ずかしくないのかと問うが、それが親の役割と言わんばかりの言葉を繰り返し再び雷をその身に受けた。
「今、お前が就いているのは何だ」
「神官……といっても、見習いです」
「見習いは、何をしないといけない」
「修行です」
「そうだ。だから、お前は真面目に日々の修行に励めばいい。そして、精神面を鍛え直すのだ」
「と、仰られても……」
塗れ歪み切った精神面を叩き直さなければ、今以上に自分に迷惑を掛けてくると判断したナーバルは息子に厳しい修行を課す。勿論、逃げ出さないように見張りを付けての修行だ。
「ち、父上」
「何だ」
「娼婦は……い、いえ」
父親の凄味に屈服したセインは、慌てて口をつむぐ。この状況で「娼婦」の名前を出すのは危険そのもので、下手したら説教に有する時間が倍以上のなってしまう。そう本能で「危険」と察したセインは、今回は大人しく父親の意見に従った方がいいと判断するのだった。
自身の息子を利用し、巫女フィーナとくっ付けようとしていた。しかし息子の精神年齢の低さと娼婦好きにはほとほと呆れ返り、自由にできる別の人物を捜した方がいいと決意した今、息子に容赦はしない。それに息子とこのような話をするのが、いい加減うんざりしてきている。