新緑の癒し手
長年、側で苦しんでいる姿を見続けてきたというのに、ダレスに何一つしてやることができなかった。だからこのような頼みごとを聞き入れ、ダレスの心労を取り除ければとヘルバは手を貸す。その素晴らしいというか素敵な二人の関係に、フィーナは羨ましいと思う。
村で暮らしていた頃、フィーナも数人の友人がいた。しかし今思えば、彼女達は本当の意味で友人関係を築いていたのか。フィーナが巫女になった時、彼女達はどのような表情をしていたか。同情や哀れみを持った表情――いや、自分達の命を救う道具として見ていた。
所詮は、表面だけの友人関係。本当の意味で友人関係を築いていたとしたら神殿に入った後も交流が続いているだろうが、彼女達からフィーナ宛に手紙が届いたことは一度としてない。
フィーナが神殿に行った日に、彼女の存在を忘れてしまったのか。それとも道具相手に手紙を出すのは、億劫と考えているのか。どちらにせよ巫女になった日に、彼女の人生は変わった。
だが、神殿の生活の中でかけがえのない存在に出会う。それがダレスでありヘルバで、特にダレスに対しては特別な感情を抱くようになった。現在、彼の血の呪縛の影響で想いを全て受け入れてくれているわけではないが、互いの気持ちが繋がっていることは確信できた。
また、ヘルバが手助けしてくれることも有難く、何度礼を言っても足りないくらいだった。種族間の蟠りがある昨今、このように違う種族との交流はフィーナの価値観を大きく変えていく。同時に彼といい友人関係を築けないかどうか、躊躇いつつヘルバに尋ねてみる。
「友人?」
「もし、宜しかったら友人になって頂きたくて……ご迷惑でしたら、いいのです。私、人間ですから」
「君となら、いいよ」
「本当ですか?」
「人間は嫌いだけど、全員じゃない。あの娼館の女主人は頭がいいし、あのような人間は滅多にいない。それに君は、あいつの側にいなければいけない人間。だから、何というか……特別だ。君は、あいつのことが好きなんだろう? でも、今の状況では一緒になることはできない。だから、あいつが血の呪縛で悩まなくていいように方法を探す……で、いいのかな?」
フィーナの考えを的確に読み解くヘルバに、無言で頷き返すしかできない。自分の考えが正しかったことにヘルバも頷き返すと、ダレスとフィーナが互いに想い合っているのは前々から気付いていたという。それもとてもわかり易い態度だったと、半笑いしながら話す。