新緑の癒し手
「図星ね」
「な、何!?」
「まだまだ、お子ちゃまね」
「客に言う台詞か」
「あれ? 今、何と言ったのかしら」
「客と言っていたわ」
「それ、おかしくないかしら。お客様っていうのは、毎回きちんと支払いをしてくれる人よ」
「そう、貴方のようにツケ払いをしない人のことを言うの。また、溜まっているのでしょう?」
痛い部分を突かれ、セインは黙り込む。確かに以前までのツケは父親に泣きついて支払って貰ったが、再びツケでの支払いを行っている。この点に関してはサニアも後でまとめて請求すればいいと考えているので、娼館にセインが訪れても一応相手を用意してはくれる。
「客だ」と言って胸を張って言える立場ではないので、セインが楽しんでいる途中で中断させる。何よりサニアは店の子の身体を第一に考えているので、優しさの欠片も感じられない動物的な抱き方をするセインに、いつまでも大事な子を提供するほど其方の器は大きくない。
また、娼婦達は仲間意識が強い。だからこそサニアの命令を受け取った後、すぐに救いに来た。そして日頃の鬱憤晴らしということでセインをおちょくり、相手のプライドを痛めつける。それに対してセインは激昂するが、現在の姿で虚勢を張っても迫力の欠片もない。
「立派な部分は立派なのに、それ以外の部分はからっきし。見た目はいいのに、可哀想だわ」
「何が誇れるのかしら」
「血筋、家柄?」
「それは、自分が頑張って会得したものじゃないわ。ただ、周囲から与えられたものじゃないの」
「それなら、努力をすれば……」
「すると思う」
「思わない」
「するなら、もっと早くにしているもの」
そのように言った後、一斉に冷笑する。日頃プライド云々と言っているセインも流石に痛い部分を突かれたのだろう、顔を真っ赤にしながら身体を硬直させている。何とも無様で惨め過ぎるセインの姿に、一部の娼婦は吹き出し腹を抱えながらケラケラと笑いだしていた。