新緑の癒し手
第七章 涙の果てに
フィーナが竜の村に滞在し、あれから四週間が経過する。この頃、フィーナの精神面も安定しだし、ダレスとレグナスを安堵させた。しかし相変わらず一緒の寝台で寝続けているので、ダレスの睡眠時間は極端に短い日々が続く。そして今日も、半分寝ている状態で仕事を行なっていた。
勿論、そのような状態で仕事がきちんとできるわけがなく、一緒に働いている父親を心配させる。今日、親子で行なっているのは畑仕事。ダレスが土を耕しレグナスが耕した場所に種を蒔いているのだが、なかなかダレスが土を耕してくれないので、種蒔きが進まない。
「ダレス」
「……何?」
「遅い」
「えっ!?」
「早く耕す」
「……御免」
父親の指摘にダレスは鍬を振り上げ土を耕しだすが、寝不足の影響は強くすぐに疲れてしまう。見兼ねたレグナスは溜息を付いた後、ダレスから鍬を受け取ると息子の代わりに土を耕しだす。レグナスに代わった途端、仕事の速度が増し、瞬く間のうちに土が耕された。
「種蒔きはできるな」
「勿論」
「それが終わったら、寝ろ」
「いいの?」
「その状態だと、いつか倒れる。彼女の心配をするのもいいが、まずは自分の身体も考えろ」
確かに、レグナスの意見も一理あった。フィーナを大事にしたいと思うのなら、ダレスが倒れたら元も子もない。それに倒れたら彼女が悲しみ、折角回復してきた精神面が再び病んでしまう。だから寝られる時に寝て、常に肉体をいい状態を保つべきとレグナスは話す。
「ところで、あの娘は?」
「機織中」
「村で、評判がいいな」
レグナスの話の通り、フィーナが織った織物は評判がいい。絵柄は繊細で、自分達が今まで織っていたどれにも当て嵌まらず、彼女が描くデザインを真似している者までいるほどだ。このあたりもフィーナが村に受け入れられた要因のひとつなのだろう、そう評価を下す。