新緑の癒し手
「……平気」
「フィーナ?」
「相手がダレスだったから、怖くはなかった。大丈夫……あのことで、傷付いてはいないから」
「だけど……」
「ダレスは、悪くないわ。もっと早く気付いていれば、このようなことにはならなかった。私、こういうことに疎くて……ダレスの気持ちがわからなくて……だから、貴方を苦しめて……」
「いや、謝るのは……」
「違うの!」
自分でも何を言っているのかわからなくなってきたのか、言葉は途中から途切れ途切れになってしまう。それでも言いたいことは通じたのだろう、ダレスが纏う雰囲気が変化する。ダレスの側にいたい、側にいて欲しい。その気持ちが溢れしたのだろう、フィーナの眼元が濡れる。
「私、ダレスのことが……」
「……わかっている」
「だから……」
その先を言うのが恥ずかしいのだろう、フィーナの顔が火照り一気に赤面していく。それでもこれに関しては付き合っている者同士が普通に行っており、それに村の同年代の者も既に経験している。それにそのように思うことは異常ではなく、この感覚は正常といっていい。
それでも経験のないフィーナが口にするには羞恥心が刺激されるのだろう、口を開いても上手く言葉が出ない。何度も言葉を発しようと試みるが失敗に終わり、別の意味で羞恥心が増していく。だが、いつまでもこの状況を続けているわけにはいかないので、フィーナは意を決する。
ダレスならいい。
フィーナが発した言葉に、ダレスの全身が硬直する。まさか彼女の口からそのような言葉が発せられるとは思わなかったのだろう、それに続く言葉が見付からない。それ以上に彼女の言葉は限界寸前だったダレスの理性を壊すには十分なもので、耳元で何かが切れる音が響く。
彼女を大事にしたい。
彼女を傷付けたくない。
その思いで懸命に理性と戦っていたが、フィーナはダレスがいいと望んだ。彼女の言葉を頭で理解する前に身体が動き、反射的に彼女の華奢な身体を抱き締めていた。この先がどうなってしまうのか――というのはわかっていたが、だからといって止めることもできない。