新緑の癒し手
そもそも、愛し合っている者同士が抱き締め合い、それ以上の関係に発展するのは至極当然。二人の関係が認められないものだとしたら、女神が何らかの合図を出しているだろう。しかしこれに関して女神は黙認を続け、それどころかフィーナの恋愛の認めているかのようだ。
ただ、側にいて欲しい。
それだけの願いを持ち続け、一時期は敵わない恋と諦めていた。だが、やっと繋がった想いは強くフィーナはダレスに身を預けるが、最低限の知識しか持っていないフィーナにとって、緊張感がないわけではない。それでも、一度口に出してしまったことを訂正はできない。
寝台に横たわり、交わされるのは甘い口付。温泉の時に突然された口付とは違い、荒々しさは感じられない。フィーナの口付はやはり拙いものであったが、それでも懸命に応える。彼を離したくない――その想いがフィーナを突き動かすのだろう、これまた拙いながらも応える。
彼女達も――
ふと、脳裏に村の同年代の者達の顔が過ぎる。彼女達も付き合っている者とこのようなことを行い、愛を確かめ合っていたのか。あの時は理由がわからなかったが、今ならハッキリと理解することができる。このように愛している人に抱かれていると、安らぎを覚える。
女の気持ちを理解し考えようとしないセインと違って、優しさが籠められている。何処か余裕のない雰囲気であったが、ダレスはフィーナを気遣い、無理に支配しようとはしなかった。いや、そのようなことをすれば消えることのない罅(ひび)を作ってしまうと、ダレスはわかっていた。
セインの時と違い、顔が紅潮してしまう。こうなることを望んで受け入れたというのに、羞恥心の影響で混乱が続く。フィーナはきつく瞼を閉じると、反射的に顔を逸らしてしまう。その拒絶反応とも取れる仕草にダレスは手を止めると、一言「止めようか」と、言いだす。
「お願い、このまま……」
勿論、ダレスを拒絶するわけがない。フィーナは閉じていた瞼を開くと頭を振り、止めないで欲しいと訴える。それに今止めてしまったら、再び辛い思いをさせてしまう。フィーナは眼元を潤ませながら彼に視線を合わせると、顔だけではなく首筋まで紅潮させるのだった。
「まさか……」
その質問に、フィーナは頷くしかできない。それどころか経験がないことを嫌がられるのではないかと、其方の方を恐れてしまう。フィーナからの返事にダレスは明後日の方向に視線を向け暫くの間考え込むと、そうだというのなら最初から言って欲しいと言葉を返す。