新緑の癒し手
「……ダレス」
「嘘じゃない、本当だ」
「ダレスの言葉は、信じられる。敵の多い神殿の中で、私を助けてくれ見守ってくれたから」
「最初は、母さんが残した言葉に従っていた。だけどいつからか、それが違うモノだと気付いた」
それが何なのか理解していたが、それを認めるのが怖かった。竜と人間の混血児で、半端者と罵られ続けてきた身分で、望み叶えていいものではないと認識していた。だから無理矢理心の奥底に封じ込めてきたが、いつの間にか感情は溢れ出しセインの悪行に腹を立てた。
「今なら、わかるかもしれない。周囲の反対を押し切ってどうして、父さんが母さんと結ばれたのか……たとえ、この先に不幸が待っていようとも、一緒にいたと望んだからこそ結ばれた」
愛しているからこそ、共にいたい。
また、互いの温もりを感じ合いたい。
決して、離したくない。
このまま、ずっと――
だからダレスはフィーナを抱き、フィーナもまたダレスになら抱かれていいと望み、明確に言葉として表した。どちらともなく互いの唇を求め、愛しい者が側にいてくれることを確認し合う。そして唇が離れた時に見せたフィーナの笑顔が愛らしく、微かに頬を紅潮させていた。
ふと、フィーナの笑顔に、ダレスはあることを思い出す。確かに自分はフィーナを愛しているが、明確にそれを言葉として表してはいない。あの時は身体の変化を気にしていたので、想いを口に出すことができないでいた。しかし今は、血の影響も薄れその心配はない。
「フィーナ、その……」
「どうしたの?」
「いや……」
やはり面と向かって口にするのは気恥ずかしいらしく、途中で口籠ってしまう。いつになく珍しいダレスの態度にフィーナは、何か気に障ることをしてしまったのかと心配する。勿論、そのようなことは一切なく、今回はダレスがなかなか口に出すことができないのが原因。
だが、明確に言葉として表さないといけない。フィーナを抱く行為自体も愛情表現のひとつだが、だからといってそれでいいというわけではない。「女は、ハッキリとした言葉が欲しい」と、以前娼婦達が話していたことを思い出す。それだけ女は、相手の言葉を重要視する。