新緑の癒し手
「痛み止め、いるか?」
「……うん」
やっと発せられた弱弱しい声音にダレスは返事を返すと、脱ぎ捨てた服を身に着けていく。そして一階に置いてある薬箱とコップに注いだ水を手にし、フィーナのもとへ戻って来る。するとダレスの存在を気配で感じ取ったのか、フィーナは顔だけを外へ出し出迎える。
寝そべっている態勢では薬は飲めないと、ダレスはフィーナの身体を起こそうとするが、寸前で何とか頑張ってみると言われてしまう。彼女の言い分にダレスは頼っていいと言い返すが、いかんせん今は何も纏っていない状態なので下手に手を貸して欲しくないというのが本音。
赤面しているフィーナの状況から、彼女が何を嫌がっているのか悟ったダレスは、床に散らばっている服を拾い上げ彼女に手渡す。続いて痛み止めの薬と水が注がれたコップを手渡すと「ごゆっくり」と言葉と共に自分は背を向け、フィーナの着替えが終わるのを待つ。
やっとの思いで痛む身体を起き上がらせると、痛み止めを水と共に口に含むが、余程苦かったのか表情が歪む。それでもこれを呑まないと身体が言うことを聞いてくれないので、気合を入れ胃袋に流し入れる。そして全ての水を飲み干し、口の中に残った苦みを洗い流す。
使用していたコップをサイドテーブルに置き服を身に着けようとするが、身体全体に鈍い痛みが走る。呻き声を発し丸まってしまうフィーナに、ダレスはそのままの状態でいいので温泉に行かないか提案する。温泉に入れば痛みも緩和され、いい気分転換にもなると話す。
「でも……」
「抱きかかえる」
「いいの?」
「無理をさせたのは俺だし、それに抱きかかるくらいは何ともない。ただ、服は自分で持って欲しい」
「うん」
「それに、今の時間なら……」
「誰もいない?」
「早起きをする者がいても、仕事をしないといけないからのんびりと温泉に浸かっていられない。だから、安心していい」
ダレスの提案にフィーナは頷くと、服を抱きかかえるようにして毛布で身体を包み込む。外から肌が見えないか確認し、これなら大丈夫と判断するとダレスに合図を送る。その合図にダレスはフィーナの身体軽々と持ち上げると、いそいそと建物の外へ向かうことにした。