新緑の癒し手
自分達の正当性を高らかに唱えても、ルキアを神殿の奥に閉じ込め最低限の自由さえ奪っている時点で、神官達の言い分は自己弁護の言い分と捉えてもいい。また本当にルキアの心情や立場を思っているというのなら、レグナスに全ての責任を擦り付けることはしない。
自分は、女神に仕えている。
だから、大丈夫。
と、高を括っているのだろう。しかし、女神はいつまでも甘い顔を見せているわけがなく、とうとう人間に愛想を尽かす。巫女の力が失われることはルキアの願いであったが、レグナスの心が浮かれることはない。常に冷静に振る舞い、彼等が暴発しないようにしないといけない。
だが――
本当に、大丈夫か。
と、不安感が募る。
それでも逃げるわけにはいかず、立ち向かわないといけない。それに人間達に現実を突き付け、自分達が行ってきた振る舞いに気付いてもらわないといけなかった。まさに運命の転換期というべきこの状況に、レグナスは自分自身に言い聞かせるかのように力強く頷いていた。
「いいの?」
「フィーナは、座っていていい」
「で、でも……」
「腰が、痛いだろう?」
「前よりは……」
「いいよ。それに、片付けをするって約束した。今日は一日、ゆっくりとしていた方がいい」
「痛み止めがあれば平気」
「無理はしない方がいい」
フィーナの申し出に、ダレスは全て断っていく。あれだけ情熱的に抱き続けた結果、フィーナが身体を痛めてしまったのだから、これくらいのことは自分でやらないといけない。それなら朝食くらいは作りたいと申し出るが、ダレスは頭を振り朝食も自分が作るからいいと断る。
そのように言われても何かをしないという意思が強いフィーナは、朝食が駄目なら昼食や夕食を作りたいと言い出す。強情とも取れる彼女の申し出にダレスは肩を竦めると、あれこれと目の前で甲斐甲斐しく動かれると、気分が落ち着かないので止めて欲しいと本音を話す。