新緑の癒し手
刹那、身体が震えた。
フィーナはダレスが側にいてくれるからこそ、採血に伴う激痛に耐えることができた。だからその支えとなる人物が自分の側から消えた場合、物凄い喪失感に苛まれ彼女も感情を失う。
側にいて。
その言葉が彼を縛り付ける要因となることはわかっているが、フィーナはそれを願ってしまう。恵まれた環境に置かれている者が発する我儘――という言葉が彼女の耳に聞こえてこないわけでもないが、自分を「巫女様」と呼ぶ神官達より信頼できるのも本音であった。
「いい夢を――」
言葉を掛けるべき相手は、離れた場所で休んでいる。それでもフィーナは言葉として表し、相手が落ち着いて眠れることを願う。彼にとって現実は残酷そのもの。だから夢の世界では、それらの苦痛から解放されて欲しい。夜空に浮かぶ半月形の月を一瞥すると、フィーナは寝台に潜り込み眠りに付く。
「おやすみなさい」と、彼に囁いて――