新緑の癒し手
「親友に、有翼人がいます」
「本当!?」
「名前は、ヘルバと申します」
「会える?」
「どうでしょうか。あいつは気紛れですので……ただ、フィーナ様には興味があるようです」
ダレスに有翼人の親友がいたことが以外だったのだろう、どのような経緯で親友になったのか尋ねる。そもそも人間が暮す土地で他の種族に出会うのは確率的に低く、ましてや交流を持つのは難しい。それに対しダレスは、互いに共通する部分があったから――と言葉を濁し、返答とする。
フィーナに互いの関係を偽ったダレスだが、彼がヘルバと親友となったのはダレスの父親とヘルバ父親が昔からの知り合いという共通点が存在したからだ。そして両者の接触の主な理由は、ダレスが竜と人間の間に誕生した珍しい存在というヘルバの一方的な好奇心からであって、それはいい笑い話となり今は良き親友関係を築き例の件も頼める仲へ成長した。
しかしフィーナはダレスの正体を知らないので、ヘルバと呼ばれる有翼人と偶然に出会い友人同士になったのだと勘違いしてしまう。だが、その勘違いはダレスにとって都合がいい。下手に検索されるのは好きではなく、ましてや半竜半人の我が身への反応が怖かった。
だが――
あの件を思うといつまでも隠し通せるものではなく、それにタイミング的に正体を話すのに最高の状況であった。ダレスは思い悩んだ末、フィーナに自身の正体を話そうと決意する。そして意を決し内に抱えている苦悩を言葉として発しようとした時、フィーナの言葉が遮った。
「有翼人は、どのような場所に暮しているのかしら。私達と同じように、村や街があればいいけど……」
「森の中です」
「森?」
完全に話すタイミングを見失ったダレスは、自身の正体を話すことなくフィーナの疑問に回答を提供する方を優先する。ヘルバをはじめ有翼人はダレスが言葉に発したように森の中、それも樹海と呼ばれる場所で暮しており、彼等の住居は大きい木々を刳り貫いた中に造られている。
刳り貫いたと説明されてもいまいちどのような物なのかわからないフィーナは、木の表面に作られた丸い穴を想像し、そのような場所に有翼人は暮しているのかとダレスに問う。彼女の想像力にダレスは言葉を失うが、確かにそれは間違ってはいなく殆んど正しいといっていい。