自問自答
意味も解らず、というか。
余りに突然すぎて、理解の範疇に及ばずに戸惑っていると、一言。
「好きな人ができた」
はいー?
益々、意味が解らない。
額に浮く汗を拭うことも忘れさせるくらいの、突拍子もない二言目。
ただただ驚き、馬鹿みたいに呆気に取られている私を、タケルはあっけなく捨てた。
ポツリ、街中で去って行くタケルの背中をぼんやりと眺め、わけがわからないと地面に零し途方に暮れた。
その後には好きな人ってなんなのよ! と怒りがわき。
そのあとには、一人にしないでよ……と悲しみに苛まれた。
ハンカチを握り締め、一人で家に戻る道すがら。
頭の中をめぐるのは、好きな人って誰? いつからなの? 私のこと嫌いになったの?
そんな疑問ばかりだった。
考えても考えても思い当たる節はなく。
タケルの気持ちの変化に気づかなかった、私が馬鹿だったんだという結論に至った。
そう、そうやって自分の心を何とか丸め込んできたというのに。
「なんなのよ。一体!」