実愛
TWO


私は中学生になった。赤いランドセルを
押し入れにしまって新品のセーラー服を
身にまとい家をでた。
生まれてから育ってきた知らない場所は
ないほどのこの町で私は今ものすごく、
急いでいる。
9時から入学式なのに9時に家をでる私は
すごく勇者って自分でも思う。
どんなに急いでも遅刻決定。だけどこぐ
ペダルはいつもの3倍の速さ。
坂を思い切り下り中学校に着いた。
3分で着くのは家が近いからか、私が
速かったからか。そんなことはどうでもいい
けど早く行かなくちゃ。自転車を置いて、
自分のクラスを確認しに行く。
私は…あ、あった。1年2組ね、知ってる人…
知ってる人…誰もいないし。
人見知り激しい私がこんなこと…。
まぁ、いい。急がなくちゃ。
階段を上り3階まで急ぐ。教室は1番奥だ。
ガラガラガラッ!
「すいません!遅れましたっ!」
教室のドアを思いきり開けた瞬間、目に
飛び込んできたのは誰もいない教室だった。
「え、嘘。誰もいないじゃんか。」
その時黒板の゛入学式 9:30〜 体育館゛
という文字が目に入った。
「そういうことかよ~。まじかよ。」
仕方ないから荷物を置いて体育館に行こうと
したその時だった。
「君もおさぼりちゃん?♪」
すごくチャラチャラした男が廊下から顔を
のぞかせていた。
「だれ、あんた。」
こんなチャラチャラした男私の記憶の中には
存在していない。
「俺は隣の1組だよ〜ん♪あ、俺川小出身
なんだ!君は?」
すっごくこの人チャラチャラした喋りた方
だなあ。
「私は…名小だけど」
案外近くの小学校だったからあんまり口に
したくなかったけどまあ聞かれてるし。
「まじで!?超近くじゃね?俺ら運命♪
って事で付き合ってみようか♪」
はあ、付き合うね。もうどうでもいいよ。
こんな人と関わいたくな…い?
え、付き合う?え…え、ええええええ!?
「え、ちょっ、何言って…は!?」
意味不明な彼の話に頭がついていかない。
私は彼の理解できない言葉に驚いて
立ちつくしたままでいた。
「ははっ(笑)冗談だよ!信じちゃった
感じ?♪可愛いね~♪俺の名前はね、
玉木優也。優しい優也くんだよ♪」
「あ、冗談…ははは…。」
なんだ、冗談か。まあ当たり前だよね。
玉木優也…何かどこかで聞いたことがある
名前…。でも思い出せない。どこで聞いた
のかな?
「君の名前はー?」
「え?私?あ、私は…峯夏南子。」
「かなこちゃんか♪可愛い名前だね♪
よろしくっ!」
こんな学園もののドラマとかでありそうな
出会いが彼との出会いの始まりだった。









入学式が終わってクラスのみんなと先生が
帰ってきた。
もちろん、先生にはすごく怒られてた。
そのせいでなんか目立っちゃって大人しく
生活したかった私にとっては散々な目に
あったって感じ。
HRで自己紹介をすることになった。
1人ずつ1人ずつ終わって私の番が近づいて
くるその時、後ろの子に話しかけられた。
「ねぇ、峯さん。何小?」
「え?あ、名小ですけど…」
今から紹介するのに聞くとか意味不明。
そう思ったけど聞いてきた子にそんなことは
言えないしね。
「名小なんだ!私川小だよ~♪なんか
結構近いじゃん!よろしくね!」
「あ、よろしくね。」
川小…あ、優也くんと一緒だ。てか、私
優也くんとか呼んじゃってるよ。ちょっと
告白されたからって冗談だったのに調子に
乗りすぎだろ。はぁ…。
その時はこの子の事も優也くんの事も、
何とも思わなかったんだよね。
あんな関係になるなんて思いもしなかった。




私はソフトテニス部に入ることにした。
別に優也くんが男子ソフトテニス部だから
とか関係ないけど、お兄ちゃんがやってるし
やりたいもの別にないしみたいな感じ。
「あれ?峯さんじゃーん!峯さんもテニス部
入っちゃう?入っちゃう?♪」
「あ、えっと、クラスの…」
そういえば名前なんだっけ。自己紹介の時も
よく聞いてなかったからわかんないや。
「あれ?私の名前覚えてない感じー?
ひどいなあ(笑)私は桑新部架古!
かこって呼んでね♪」
「よろしく…かこちゃん。」
名札を見るめ読めないような名前だった。
こんな名前の人いるんだ…。
「あ、今こんな読めないような名前の
人存在するんだとか思ったでしょ?笑」
え、図星なんだけど…。なんでわかったの…
「その顔でわかっちゃう♪」
さっきから考えてることを読まれてる感じで
嫌だ。
そんな話をかこちゃんとしていたら男子
テニス部の方から誰かが走ってきた。
「かなこ〜!」
あ、お兄ちゃんだ。
「え、ちょ、あのイケメンだれ!?え!?
峯さん!誰よ!」
「お兄ちゃんだけど…」
「ええええええ!?めっちゃイケメン!!」
お兄ちゃんめっちゃイケメンなの?まあ、
結構モテるみたいだけど…
「かなこ!テニス部入ったのか?」
「うん、さっき入部届渡してきたの。」
「そっか、頑張れよ。お、友達か?」
「え?あ、そう…同じクラスの…」
「かこです!くわにべかこっていいます!」
かこちゃん…。
「かこちゃんか、可愛い名前だね♪
夏南子の兄の海也だ。よろしくね。」
「かいやさん…」
かこちゃん、お兄ちゃんに惚れたな。
まあ、小学校の時も私に絡んでくる子達
なんてみんなお兄ちゃん目当て。
私と仲良くしたくて近寄ってくる子なんて
いなかった。もう慣れっこだけど。





お兄ちゃんとかこちゃんと別れを告げて
私は職員室へ向かった。朝の事で呼び出し
されたから。
どうせ反省文とかそんなのでしょ。
めんどくさいけど遅れた自分が悪いし、
素直に怒られよ。
「失礼しまーす…。」
職員室に入ったら奥の机に担任がいた。
「お、峯!よし、隣の部屋で反省文を
書きなさい。終わったら呼ぶように。」
「はーい。」
ほら。だろうと思ったよ。まあ早く書いて
帰ろっと。
隣の部屋のドアを開けた瞬間目に入ってきた
のは…優也くんの姿だった。
「あれ?かなこちゃんじゃーん♪
あ、反省文?仲間だね〜」
嘘、あ、そうか。優也くんも入学式でないで
いたもんね。そっか。
自分で納得した私は優也くんの隣に用意
されてる椅子に座った。
その時私は気づいた。この部屋には私と
優也くん2人きりだということを。
どうしよう。優也くんが隣で部屋で2人で
反省文で…。頭がおかしくなりそうになって
優也くんはちゃんと書いてるのかなと隣を
見たら…優也くんは…
ぐっすりと寝ていた。
嘘。この状況で寝れちゃうの?えー。
ドキドキしてたの私だけかよ。損した。
完全に冷めた私は反省文を書いてすぐ先生を
呼び職員室をあとにした。
家へ帰る途中でも優也くんのことは頭から
離れなかった。まだあって1日なのに。

それからも優也くんのことを毎日想った。
いつしか好きなのかもしれないとまで
思うようになった。
でも冗談だから冗談だったから。
そう自分に言い聞かせて気持ちを抑えた。
でも好き。そう思い始めたら気持ちは
止められなかった。優也くんに気持ちを
伝えたい。だからアピールしよう。
そう決めた。




ある日優也くんにお兄ちゃんがメアドを
知りたがってたと嘘をついてききだした。
自分が知りたかっただけなのに、素直に
言えなくて嘘をついてしまった。
お兄ちゃんには説明したけどその時
「夏南子は玉木が好きなのか?(笑)」
「え、べ、別に。」
なんて言われて本当の事言えなかった。
お兄ちゃんにはいっつもばれちゃう。
私のことなんかお見通しなんだろう。



「俺のメアドー?いいよーん♪」
「あ、ありがと。お兄ちゃんに渡す」
「かなこちゃんのも教えてよ?俺かなこ
ちゃんのも知りたい♪」
優也くんからそんな事言ってもらえるとは
思わなかったからすごく嬉しかった。でも
すごく恥ずかしくて下を向いたままOKって
返事をしちゃった。
すごくすごく嬉しかったのに。




その日の夜優也くんからメールがきた。
‘かなこちゃん、優也だよ!!’
優也くんからメールきたことが嬉しくて
嬉しくてでも返信の内容は
‘よろしく。’
自分がすっごく嫌になった。なんでもっと
可愛くできないんだろう。
それでも優也くんはあきれず返信してくれて
毎日メールするようになった。
学校の事、部活の事、家族の事…
たくさんの話をした。毎日毎日優也くんとの
メールが楽しかった。
優也くんと知り合って2ヶ月が経ったある日
ふとこのままで終わるのかな?友達のまま
時間だけが経っていくのかなって。
そう思ったらなんにもしない自分が嫌だ!
って思った。
だから私は決めたの。優也くんに告白する。
フラれることわかってた。けどこのまま
気持ちを伝えないのは嫌だったから。



その日の夜メールすることにした。
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