涙色
「…さくら、ここ……め」
「ひぃぃっ!」

「…え?」

「…え?」

読め、って…言った?

「え、えっと。この時代は「ぷっ」
「…は?」

私が言い返すと、弾けるようにして漏れ出す笑い声。
え…私、みんなが笑うような事した?

「お前、授業終わったら説教な」
「…え?」
「浅倉」
「ささくら?」
「あーさーくーらーはーるーと!」
「…あぁ!はい!って、え?」
「だから、俺は笹倉じゃなくて浅倉を当てたんだよ」
「あ…はい」

もう。まさに、穴があったら入りたい。
みんな私の事見て笑ってるし、入学してから今日まで、私こんなキャラじゃなかったのに…泣きたい。


「はぁ」
「澪うけるんだけど」
「なな!おいっ!しんじゃう…」
「寝てるからわるいんですー!」
「それにしても浅倉と笹倉って似すぎだよね」
「ほんとな。バカだな」

恥ずかしい。心の中は熱中症なう。
そういえば、はるとくんって浅倉って苗字だったんだなぁ。

「おい」
「ひえ!?」
「俺そんな怖いか」
「…いいえ」

"おーれ、あさくら!"なんて言ってドヤ顔してきた。
こいつだよ…私を恥のどん底に突き落としたやつ。

「どうしてくれんのー!私の立ち位置!」
「お気の毒に」
「ふざけんなっ」

少し面白がりながらはるとくんをバシバシ叩く。

「お前、女じゃねーだろ!いてぇから!」
「列記とした女子です女子、むしろ乙女だよ」
「うるせーよ」

イタズラっぽく笑ったはるとくんが私を持ち上げる。
…え?

「ちょ、ちょ!離してよばか!」
「お前軽すぎ。どこに胃あんの?」
もう言い返すのもめんどくさくなって、はるとくんの思うがまま。
…なんか。嬉しいって、思っちゃったり。

こんなの、はるとくんのただの気まぐれだもんね。
そうそう。


…でも。
今だけは、こうやってはるとくんと触れていたいの__
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