好きな人。
「へぇ?」
「勝てないの…、どうしても、勝てないような子なの…」
笑顔が似合って、明るくて、元気。
そんなアイドルみたいな子に勝てない。
ましてや田中さんみたいな、気さくで優しい子だったら…。
それとも谷村さんみたいな、サバサバしてて姉御肌で、加えて剣道上手くてカッコイイ子だったら…。
あたしの魅力ってなんだろう?
だってあたし、バカでやかましくてうるさいだけだよ…。
駄目だ、あたしなんかじゃダメだ。
あたしなんかじゃ、観星の好きな人になれないよ。
くしゃ
ふと、髪の毛をなでられる。
見なくても気付く、観星の大きい手。
その時あたしは、自分がうつむいて、震えて、泣きそうになってたのに気がついた。
「…なんでお前がそんな顔すんのかは知らねーし、そいつの好きな奴っていうのがどんだけスゲー奴かも、知らねーけど。…お前はお前でいいんだよ。誰に勝てなくても、きっと良いんだよ」
そういう観星の言葉が、手が、優しくて。
あったかくて。
愛しくて。
「………観星ぃ……」
一粒、二粒、涙を流して。
そして決めた。
「…あたし、頑張るよ」
たとえ、君の好きな人に勝てなくても。
たとえ、君の好きな人になれなくても。
あたしはあたしの恋を、ただ頑張る。